FX業者について考える:その1(呑み業者、DD、NDD)

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FX業者の取引モデルについて幾つかののタイプに分けて考えてみたい。トレードの勝ち負けには直接関係しないが、長く為替相場と付き合うつもりなら抑えておいたほうが良いポイントだと思う。

まずは出来るだけシンプルなビジネスモデルから取り上げてみよう。

タイプ1:完全呑み業者(バケットショップ)

100年ほど前のアメリカにはバケットショップ(リンク:英語版wikipedia)と呼ばれるギャンブル場のようなものが存在した。ここで客は株やコモディティ(貴金属や穀物など)の値動きを予想して上か下に賭けるのだが、業者側は裏付けとなるカバー取引を行わない(呑み行為)。そのため、客の儲けは全て業者の損、客の損は全て業者の利益になるという明確な利益相反構造がある。実質的にはギャンブルと同じ仕組みだ。

カバー取引をしないため、市場の変動によるリスク(マーケットリスク)は全て業者が負う。つまり、客の利益が大きくなりすぎると業者が破綻するというビジネスモデルである。日本にはこのモデルで営業するFX業者は存在しないため本稿では深く追求しない。(海外FXの一部はこのモデルかもしれない。)

タイプ2:NDD(ノー・ディーリング・デスク)

NDDとはNo Dealing Desk(ノー・ディーリング・デスク)の略で、業者がマーケットリスクを取らないビジネスモデルである。語源的には順番が前後するが、こちらのほうが仕組みがシンプルなので先に説明する。(ただし、システム開発はこちらのほうが遥かに複雑なようだ。)

NDDは客の注文を業者がそのままインターバンクなどのLP(リクイディティ・プロバイダー、流動性供給元である銀行やプロ向けブローカー)に流すモデルのことで、呑み業者とは対極的に全ての注文をカバーに流す仕組みである。業者と顧客の利益相反は無く、業者はマーケットリスクを負わない。

下の図表はFX業者の取引モデルを図式化したものである。それぞれのステップを解説する。

NDDの場合、【1】カバー先からレート(bid-ask、売値-買値)が提示される。【2】FX業者はカバー先のレートをまとめた上で一番良いプライスを顧客に提示する。【3】顧客から注文が来たら【4】カバー先に注文を流す。【5】カバー先で約定したら業者側でも同時に約定処理をして【6】顧客に約定通知するという流れだ。客の注文が約定するのは【5】の時点である。

NDD最大の特徴としては、業者がマーケットリスクを取らないという点であり、その他の特徴はここから派生したものである。マーケットリスクを取らないというのは、ロング(買い)であれショート(売り)であれ、業者自身がFXのポジションを持たないという意味である。つまり、業者はカバー先銀行などのLPに流せる場合だけ客の注文を約定させるということで、トレーダーと銀行との取次業者と言い換えることが出来る。

NDD方式のメリットとしては、客との利益相反がない、どんなトレードスタイルでも受け入れる、業者の倒産リスクが低いなどが挙げられる(※注1)。逆にデメリットとしてはスプレッドを業者の裁量で狭く出来ない、業者の判断で約定させられない、本当にNDDが正しく運用されているのか外部から検証しづらいなどのポイントがある。詳しくは次の記事で論ずることにする。また「NDD業者でも原則固定で狭いスプレッドを提示している業者もある」という指摘もあるかと思うが、その点も次の記事で扱うことにする。

なおNDDはSTPとECNという2種類に分類できる。ここでは説明を省略するので詳しく知りたい人は調べて欲しい。ちなみに、NDDはEE(External Execution、外部約定)と呼ばれたりする。最近の海外FX系サイトではA-Bookと呼ばれていたりする。後述するDDはIE(Internal Execution、内部約定)、DI(Dealer Intervention、ディーラー介在)、あるいはB-Bookとも呼ばれる。

タイプ3:DD(ディーリング・デスク)

DDモデルとはDealing Desk(ディーリング・デスク)モデルの略であり、業者がマーケットリスクを取るビジネスモデルのことである。上に掲げた図に従って各ステップを解説する。

DDの場合、【1】カバー先からレートが提示される。【2】FX業者はカバー先のレートをまとめた上で、自社が判断したプライスを顧客に提示する。【3】顧客から注文が来たら【4a】自社で約定可否を判断し客に約定通知する。【4b】注文の一部をマリーし、残りをカバー先に流す。カバー先に流れなかった部分は未カバーとしてマーケットリスクに晒される。【5】カバー先から約定通知を受けるという流れだ。客の注文が約定するのは【4a】の時点である。

マリー」というのは注文を相殺する行為を指すブローカー用語である。例えば同量の買い注文と売り注文が客から同じタイミングで出された場合、業者は同時に注文を成立させることでスプレッド分を収益にすることができる。ドル円を例に取ると、客Aが100.00円で売り注文を出して、客Bが100.10で買い注文を出した場合、同時に注文を成立させればスプレッドの0.10が業者の収益になる。実際には同タイミングで同量の注文が来ることは殆どないので、どの程度余裕をもたせるのかという部分に業者の裁量の余地が生まれる。そして、このマリー分からはみ出た部分をカバーに回すことになる。どのようにどれだけカバーに回すかは業者の裁量で、カバーしなかった分はFX業者のウェブサイト上で「店頭FX取引に係るリスク情報」の箇所に「未カバー率」として表示されている。

為替では分かりづらい人もいるかもしれないので、身近なものに例えてみよう。ハンバーガー屋(カバー先)でハンバーガーが500円前後の変動価格で売られており、A君が客の立場で、X君がFX業者の立場だったと仮定する。NDDの場合、A君(客)がハンバーガーの買い注文をX君(業者)に出した場合、買い注文を受けた時点ではX君は約定させることが出来ない。実際にハンバーガー屋で品物を確保してからA君の注文は成立する。仮に500円で仕入れて手数料を2円上乗せすれば、A君は502円でハンバーガーをロングしたことになり、この2円が業者にとって収益になる。

DDの場合、X君はA君から注文を受けた時点で約定させることが出来る(ここでは業者が502円で売ったとする。A君にとってはロング)。その後にハンバーガーを買いに行って498円で買えれば業者は4円の収益だが、逆に505円で買うことになれば3円の損になる(これが業者にとってのマーケットリスク)。さらに、横から出てきたBさんが「家族がハンバーガーを買ってきたけど、食べたくないので売りたい」と言っていれば、A君の買い注文とマリーすることが出来る。Bさんから498円で買ってA君に502円で売れば、業者はカバー取引をせずに(ハンバーガー屋に行かずに)4円のマリー収益を得ることが出来る。

DDのメリットはNDDの逆で、業者の裁量でスプレッドを狭く出来る、業者の判断で約定させられるなどがある。逆にデメリットとしては収益を圧迫する客を排除することがある、業者の倒産リスクがある、客との利益相反が起こるなどがある。

なお、マリーをしないDD業者もあり得る。その場合、客からの注文を受けた後、マリーの判断をせずにカバー先に流すことになる。このモデル(非マリー型DDモデル)の場合はマリー収益がない分、スプレッドを狭くすることが難しくなる。NDD業者に似てくるが、客の注文を業者の判断で約定させられるという点、また業者がディーリング収益を狙うことが可能になる点が異なる。

まとめ

以上はNDDとDDに関する基本的な知識である。私が本当に論じたい問題点はこの先の話なので、ぜひ次の記事も併せてご覧頂きたい。また、ここまでの情報で頭がいっぱいという人もいると思う。金融先物取引業協会(FFAJ)の公式サイトにある解説ページや、尾関高氏がForex Pressに書いたコラムにも関連する話題が扱われているので、詳しく知りたい方は併せて目を通して頂きたい。いずれも専門家の視点で書かれた情報が掲載されており、本稿でも参考にした。

次の記事ではNDDに関する論点というテーマで一歩踏み込んだ考察を試みる。

注1:NDDは業者の倒産リスクが低いだけで、絶対に倒産しないわけではない。NDDモデルを採用していた某海外FX業者の場合、スイスショックによって多くの顧客が多額の赤字残高に陥ったのだが、その際にゼロカット(顧客の残高が赤字にならない制度。海外業者の一部が採用している。英語圏では negative balance protection の方が一般的か)によって顧客の損失を業者がかぶったため、結果的にマーケットリスクで債務超過に陥った。

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