FX業者による口座凍結について考える

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新年最初の記事ということで、2021年が皆様にとって実り多い一年となることを祈りつつ、出来るだけ明るく縁起が良いテーマを選んでみた。

はじめに

昨年大晦日の夜、とある為替Youtuberの配信が始まった。その放送を聴いていると口座凍結に関する質問が寄せられていた。他のFX配信者の放送でも何度か振られていた話題でトレーダーの関心が高いのだと思うが、これをテーマにした記事はあまり見かけないので書いてみることにする。他にも同日にTwitterで口座凍結の報告をしている人がいたし、それなりに意義のあるテーマだと思う。

この配信では放送主が「勝てないうちから口座凍結の心配をする必要はない。まずは勝てるようになれ」というようなことを言っていた。それは確かにその通りだと思う。ただ、私個人の経験では口座凍結は大きなテーマだった。なぜかというと、何年前の話か忘れたが、NDD化が進む前の海外において、流行し始めた自動売買のユーザーに対して業者が口座凍結しているという情報がトレードのヒントになったからだ。もちろん、同じ方法を再現すれば自分が口座凍結に遭うリスクが高くなるので、その点も併せて考える必要があった。

この記事では口座凍結について筆者自身の私的な考えを述べる。凍結を回避する具体的な方法を教える意図は無く(そもそも確定的な情報は持っていない)、各人の口座凍結への影響に関しては一切保証しない。あくまで一つの読み物ということで参考程度に留めて頂きたい。まず、凍結のパターンを簡単に分類してみよう。なお、バイナリーオプション(BO)は本稿では扱わない。

口座凍結(強制解約)に至るパターン分類

パターン1:コンプライアンス的問題

偽名、借名、虚偽情報の申告、反社会勢力との関連、マネーロンダリングの疑いなどがこれに該当する。そもそも基準を満たさなければ口座開設出来ないのだが、後に発覚した場合は強制的に解約される。これは客が全面的に悪い。

パターン2:技術的な抜け穴を付く行為

業者が提供する取引システムの穴を利用し、業者が不利益を被るような取引を実行する場合がこれに該当する。簡単な具体例を出せば、業者が提示するドル円の買値が101.00なのに100.90で注文を出して約定させてしまう場合。あるいは、1秒間に1回しか注文を出せない仕様なのに、何らかの方法で1秒間に10回の注文を出す場合などがこれに該当する。約款に記述がある場合が多く、業者側に重大な過失がある事例を除き、客が悪いと判断していいだろう。

パターン3:業者の収益を圧迫する手動トレードの継続

本稿で追求したいのはこのパターンで、手動トレードの人間が業者のディーリングに損失を与える状況が続いた場合である。イエローカードのような警告が出される場合もあれば、一発退場のレッドカードで口座が強制解約されることもあるようだ。同じ業者でも時期によって対応が異なるようで、ネット上の情報も一部錯綜している印象を受ける。

なぜ業者は一部のトレーダーを排除するのか

(筆者は内部の人間ではないし、業者のシステム設計に携わったことがあるわけでもない。出来るだけ正確を期して書いたが、素人の書いた文章であり、事実誤認や論点の見逃しが含まれている可能性があることをご留意いただきたい。)

そもそも、なぜ業者はトレーダーの一部を排除するのか、FX初心者にとって理由が理解しづらいと思うので、初歩的な部分からおさらいする。DD(ディーリング・デスク)業者の場合、ディーリングによって「狭いスプレッド」と「約定の質」というサービスの質が維持され、事業収益がもたらされている。ディーリングは、客の買いと売り注文を併せるマリーと呼ばれる行為、そこからはみ出た部分のカバー取引やマーケットリスクを取ることが含まれる。(FX業者のビジネスモデルについて簡単にまとめた記事はこちら。)

業者のディーリング収益に悪影響があると判断される取引を繰り返すトレーダーは、業者側にとって邪魔な存在になってしまう。詳細は省くが、短期トレードの一部(業者がカバーしづらい取引)が業者に損失を与えていると推測される。客の注文が売りか買いの一方に偏った場合、業者はその分をカバーに回さなければマーケットリスクに晒される。恐らく、特定の客のトレードによってカバーしづらい状況が作られ、損をすることが続くと問題になってくるのだろう。これはあくまで筆者個人の推測である。ちなみに、勝っているトレーダーの全てが凍結されているわけではないことは念の為指摘しておく。

法的に考えれば、民法の契約自由の原則に従って、客も業者も自由に契約を締結・解除することが出来る。そのため、客側が業者を選ぶ権利があるのと同じく、業者側にも客を選ぶ権利がある。業者は仕事のマナーとして「お客様」という言葉を使っているが、法的には対等な取引契約を結んでいるに過ぎない。

しかし、ユーザー側の心情としては、「ウチでFXやりませんか」という宣伝を出している業者の所に行き、利益をあげたら「出入り禁止」の通告を食らうのは納得し難い。トレーダーは毎回真剣勝負をしているので、勝てそうなチャンスには少しでも食らいつきたくなるものだ。また業者側が凍結の明確な基準を提示することも無いので、一方的に追い出す業者に対して不満を抱くのは良く分かる。意図的に「業者に損害を与えてやろう」と考えているのではなく勝てるトレードを追求した結果として業者の利益を阻害することになっただけなのだ。

他方、業者の都合としては、自社に損害を与える取引相手とは早く縁を切りたいのが実情だろう。これだけ激しいスプレッド競争で利幅が削られている業界で生き残るのは大変なことだし、損失を抑えてその分社員の給料に回したいというのが経営陣の願いかと思う。取引関係を終わらせたい相手とのコミュニケーションにコストを割くのも勿体ないので、ある程度突き放した態度に出てしまうのも理解できる。(ただし、上記パターン3に該当していると思われるのに、パターン1・2を理由として口座凍結していると疑われる事例も耳にしたことがあり、それに関しては道義的に疑問を感じる。)

金融機関に対する苦情の窓口として金融ADRという制度があるのだが、調停役が弁護士なので口座凍結問題に適しているか疑問である。繰り返しになるが、契約自由の原則によって、業者側はいつでも取引関係を終了させられる。ただし、口座凍結問題は人間同士の心情の問題、あるいは業界全体の雰囲気の問題として、何らかの形で改善してほしいというのがこの文章の意図である。

業界側からの情報発信に期待

ある程度FXの経験が長い人でも「詳しいことは不明だが、短期取引を繰り返すと口座凍結を食らうことがある」という程度の認識で、裏側の仕組みが分からないままということが少なくないかもしれない。筆者自身も推測の範囲で書いている部分が多い。これは、業者・業界側からの情報発信が殆ど無いことが原因の一つだ。契約関係は対等といっても、プロ(業者)とアマ(個人投資家)の情報には格差があるので、プロ側から情報を出して欲しいところである。

「凍結されたら仕方ない」ということで焼畑農業的に業者を転々と渡り歩いている人もいるようだ。それはそれで一つの生き方として否定する気は無い。ただ、もう少し何らかの情報が提供されていれば、トレーダー側も業者と良好な関係を維持するトレード方法を模索することが可能になり、業者とトレーダーが共存共栄しやすい環境に一歩近づくのではないか。もちろん、業者の利益と衝突するようなトレードスタイルでないと勝てないという人もいるとは思うが、それは仕方ない。

DDモデルが理想的な形で回れば、客の取引によって業者の収益が生まれ、それによって客側に良質な取引環境が提供され、さらに客の取引が活発になる、という好循環が生まれると筆者は理解している。ドル円のスプレッドが0.1~0.2pipsというのは奇跡のような低取引コストであり、日本のFX投資家が世界的に類のない低スプレッドを享受出来ているのはDDモデルが上手く回っている恩恵である。業者の収益に圧迫を与えない形のトレードであれば、業者と客の間で互恵関係を築くことが出来る。

そこに小さな暗い影を落としているのが口座凍結問題だ。「FXで勝てるようになっても、いきなり口座凍結されるリスクがある」というのは一般人の感覚からすれば変な話である。あるいは、FXに真剣に取り組んでいる人が業者を恨む結果になるというのも寂しい話だ。逆に業者側の言い分も理解されるべきだと思うのだが、「口座凍結を避けるトレード術」のようなオンラインセミナーとか「凍結されそうな時にオススメのお歳暮トップ3」みたいなブログ記事は見たことがない。FX業者・業界側からもう少し具体的な情報が出てくれば、トレーダー側も情報交換しやすくなるし、工夫の余地が出てくるのではないか。

個々の業者が積極的に情報発信するのは客と業者とのトラブルを公開することになるので難しいかもしれない。代わりに業界団体である金融先物取引業協会(FFAJ)にて「強制解約に関する相談窓口」のようなものを設置して、まずはユーザー側からの声を吸い上げてみてはどうだろうか。それに応じて、業界団体として何らかの情報を発信したり、強制解約に関して何らかの指針の設定を検討することも可能かと思う。優秀なトレーダーと業界との共存共栄のために、何らかの形で前進してくれれば、というのがささやかな願いである。

おわりに

随分と偉そうなことを書いてしまったので記事を出すのに気が引けた。ただ、顔も声も名前も出してない「誰だか良く分からないヤツ」だからこそ、表に出ている人達が言いづらそうなことを言っても良いのではないかという気がしたので、恥を忍んで公開することにした。「お前は一体何様のつもりだ」というツッコミは甘んじて受ける。

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