ロイ・ニーダーホッファー(Roy Niederhoffer)について

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ロイ・ニーダーホッファー(Roy Niederhoffer)というヘッジファンド運用者がいる。彼の兄であるビクター・ニーダーホッファー(Victor Niederhoffer)は過去に日本のテレビ番組で紹介され、著名な個人投資家BNF氏のハンドルネームの由来となったことで広く知られている。弟のロイは日本語での記述が殆ど見当たらなかったのでこの記事で簡単に紹介してみたい。

ロイ・ニーダーホッファーの経歴など

ロイが経営するR. G. Niederhoffer Capital Managementのウェブサイトの情報を元に簡単に経歴など紹介する。

ロイは1987年にハーバード大学の計算神経科学の学位を優秀な成績で取得。他のヘッジファンド(兄ビクターのファンドと思われる)で5年間働いた後、1993年に自らのヘッジファンドを創業した。

同社の投資戦略はクオンツと行動ファイナンスを元にしたもので、投資対象銘柄は株式、債券、為替、コモディティ。ファンド単体での絶対リターンを追求するだけでなく、伝統的あるいはオルタナティブ資産との負の相関を維持するというのが特色だ。主に逆張りアプローチを採用している。

ヘッジファンドに詳しくない人の為に少し補足しておくと、クオンツというのは計量分析と日本語に訳されるもので統計的・数学的に金融商品を分析する手法のことで、数学や物理学の出身者が多く活躍している。

ロイ・ニーダーホッファーのインタビュー

トップトレーダーズ・アンプラグド(Top Traders Unplugged)というポッドキャストチャンネルがあり、各種ポッドキャストやYoutubeなどでヘッジファンドなどで活躍するトレーダーのインタビュー番組を公開している。

「トレードや投資における認識バイアスを克服する方法(原題:How to Overcome Cognitive Bias in Trading and Investing)」というロイが出演した放送回があるので、ここから彼の言葉を幾つか紹介しよう。兄ビクターについての言及もある。厳密な翻訳ではなく、基本的な意味を歪めない程度に省略したり、前後を編集した形にする。

Q:何も知らない人から「貴方は何をしているのですか」と尋ねられたらなんと答えますか?

A(ロイ):私達が採用している投資戦略は、他との違いが際立つ非常に明確な目的があります。私達が目指すのは、単独でのリターンと同時に、顧客ポートフォリオに極めて安定的な下方リスク限定を提供することです。

Q:この仕事にたどり着くまでの過程を教えて下さい。

A:子供の頃コンピューターとプログラミングに興味を持ち、親に頼んでマイコンを買ってもらいました。プログラミングを独学し、アーケードにあるスペースインベーダーを自分でプログラムしました。他の人も欲しがっていると気づいたので私が書いたプログラムを売る会社を作ったのですが、高校卒業する頃には従業員が30人もいる規模に成長しました。この経験から優れたプログラムを書く方法を学びました。

プログラミングスキルは夏休みに兄ビクターの手伝いをする時に役立ちました。ビクターは初期のヘッジファンド業界に参加し、株先物が取引開始される時に取引参加した人間です。ビクターはイントラデイ(日計り、その取引日内の値動きのこと)の価格データには特定のパターンが存在し、計量可能だということを発見していました。私は高校から大学までの間、インターンとして株先物のトレードに親しんできたのです。

大学では脳の機能を研究する神経科学を学びました。音楽が好きだったので、音楽家と非音楽家の脳に違いを研究しました。脳の研究をすることで、人間の行動には脳の構造がとてつもなく大きな影響を与えていることを理解したのですが、これが私のトレードに役立っています。

1987年にハーバード大学を卒業した後、兄の会社に戻りました。兄のチームには非常に優れた人々が参加しており、成長させてもらうことが出来ました。その後、兄とは目指す方向性が違うことが分かり、1992年に自分の会社を設立したのです。

Q:人間の脳はトレーディングにどのように影響しているのですか?

A:人間の脳は大部分において、数千年前に人間の脳が進化した時代、アフリカのサバンナにおける問題に対処するために設計されたものです。脳、気質、視覚システムから成る我々の行動は、人類が生存し子孫を残す為のものです。しかし、この行動パターンは投資において最適とは言えず、多くの投資家、特に裁量トレーダーが困難に直面するのです。

感情に従うという失敗を避け、他人が持っている傾向を捉えるためには色々な方法があります。例えば人間のリスク回避傾向です。よく知られている認識バイアスですが、人間が負けを嫌う感情は勝ちを望む感情の2倍の強さだと言われています。アフリカで猛獣から生き延びなければならない環境ならば、人間の群れにライオン達が近づいてきた時に逆張りするのは良い戦略とは言えませんからね。しかし、この傾向は投資において最適とは言えないのです。

もう一つの有名なバイアスは、過去の情報よりも直近の情報を重視しがちというものです。しばらく前よりも昨日今日に起きた値動きが記憶に刻み込まれて意思決定に影響を与えるかも知れません。現実の生活では今この場で起きていることが次を予測する上で重要ですが、金融市場においてはそうとも限らないのです。

最後に、私が考えるもう一つの避けるべき重要なバイアスとして、データから得られる視覚パターンに頼って判断を下すことが挙げられます。兄ビクターは私達全員にチャートを使うなと強く教えました。ビクターはどんな形のチャートも非常に嫌っていました。チャートを使うことの弊害は、勘違いして本当は存在しないパターンがあると思いこんでしまう、というのが私の認識です。

Q:普通の人間というのは酷い投資家ということになりますか?

A:そのとおりです。認識バイアスを避けるために多大な苦痛を経験しなければ、そうなってしまいます。そこで「それならシステムトレードはどうか」と多くの人が質問してくるでしょう。システムを採用すれば感情的な判断を避けられるだろうと。ところが実際はそうではないのです。

人間はシステム戦略・クオンツ戦略を設計して運用する時、裁量トレードのときと同じ認識バイアスに陥ってしまう傾向があるのです。例えば直近のデータに頼りがちということや、負けたくないという感情の強さによって特定の戦略に偏ってしまうということがあります。

Q:兄ビクターから教わったことを教えて下さい。なぜ彼の会社からは多くの優秀なトレーダーが生まれたのでしょう。

ビクターが本当に強調していたことの一つは科学的なアプローチを採用するということです。他の皆が信じているから、他の皆がそうやって教えられてきたから、ということを鵜呑みにしてはいけない。例えばエリオット波動というのは、私が理解する限り相場予知能力はありません。科学的な証拠を示した人はいないと私は思います。データを科学的に捉えるというのが最初のポイントです。

次に兄が強調していたのは、現状に従うな、他の全員がやっているからといって同じことをするなということです。人気のトレード手法があったとすると、他の大多数と全く同じ手法で争うことになります。当時はイントラデイデータを見るのは一般的ではなかったので、そこから収益を上げることは今より遥かに簡単だったのです。

兄の会社には多様性や独創性を促す哲学がありました。「従業員は30%の時間を自分の好きな研究に使って良い」というIT企業と同じ様に、自分自身のアイデアを追求することを強く促していました。

簡単なまとめ

以上はインタビューの一部なので、さらに興味のある人は元動画を見て欲しい。今回抜粋した部分から私が理解したポイントを簡単に纏めておくと以下の通り。

  1. 特定のパターンなど収益機会になるものを見つける(当然必要)
  2. 群衆行動から離れることの恐怖心を理解する(バイアス1)
  3. 損をしたくないという感情が強いことを理解する(バイアス2)
  4. 直近の値動きに影響されすぎることを理解する(バイアス3)
  5. 勘違いでチャートから間違ったパターンを認識しがちということを理解する(バイアス4)
  6. システムトレードを採用するにしても、認識バイアスは意識的に避けなければならない
  7. 他人と同じアプローチを採用すると、同じ収益機会を奪い合うことになる

ロイの言っていることが全て正しいとは限らないし、私自身の意見とは異なる部分もあるので、あくまで一つの見解ということで理解すべきと思う。当てはまる部分もあれば、そうでないこともあるだろう。

特に、チャートに頼るなというのは、彼らが数学や統計学を使ってデータを深堀り出来るからであって、そうしたスキルの無い人には現実的には無理な話だと思う。私自身が過去記事に書いたが、単純な統計分析では逆に勘違いしてしまうことがあるので、ある程度数理分析に精通した人でなければ視覚でも確認したほうが良いと思う。

実際ロイの会社のウェブサイトを見ると会社紹介の映像が流れるが、その中には社内にチャートを写す画面が沢山出てくる。チャートを眺めていると「このパターンは繰り返される」と思うかも知れないが、それは勘違いかもしれないという警戒心は持っていたほうがいい、という程度の理解で良いかも知れない。

また、群集心理に対しては必ずしも逆張りする必要は無く、そういうバイアスがあるならついていくという判断もあり得るだろう。色々な認識バイアスがあるというのを理解するのは大事だが、対処法には色々な選択肢があるはずだ。

長文だったが少しでも楽しんで読んでいただけたなら幸いである。

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